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職と愛が欲しい

はじめてヒトの解剖した感想

医学院の授業で人間の脳を解剖するという稀有な体験をしたので、色あせてしまう前に感想でも残しておこう。

授業について

脳科学を専門に研究している大学院生を対象に、人間の脳を解剖することを通してその理解を深めるという授業。脳の解剖に関しては大きい方は豚や鳥、小さい方はショウジョウバエの解剖経験はあったものの、医歯薬学部出身でもないので当然ヒトを解剖する機会なんてものはないんですね。生命科学に従事しているわけだし、結局最終的な応用対象は人間なんだから、一回ぐらいヒトの中身をこの目に収めたいなぁ…なんて思っていたらこの授業があったので履修してみたというわけです。

実際どんな感じだったのか

脳の形態を学ぶという点では非常に有意義な実習であったということを前提に、ここではオブラートに包まず純粋に自分の中で沸き上がった感想を記しておきます。

ヒトの中身は世間から完全に隠されている国家機密で、実は脳とは異なる器官で知的活動をしている的なファンタジー展開をうっすら期待していたけど、当然教科書通りの脳でした。人間の脳を初めて見て抱いた感想は、なんかめっちゃ表面にシワの付いた豆腐。実際に触ってみると、固定(組織が崩れないように薬品で固くする操作)を経ているのにもかかわらず指でつまめば簡単にちぎれてしまいそうな柔らかさ。まさに豆腐(木綿?)です。重さに関しては牛乳パック一個分ぐらい。よくヒトの脳は重いと思われているけど、それは恐らく頭蓋や周辺の器官を含めた頭という構造が重いのであって、脳単体だとむしろ軽いと感じるレベルでした。サイズ感はラットや鳥なんかと比べると当然大きかったけど、人間の行動パターンの複雑さからするとやはり異常に小さく感じました。

感じたこと

脳が全体的に構造が脆い。頭蓋にしっかりと守られているとはいえ、たった1㎝の傷がついただけで体が完全に動かなくなってしまうような部位が多すぎる。全身麻痺を避けられたとしても、脳の一部に傷が付けば確実にどこかしらに障害が生じるという点で他の器官と比べられないレベルで重要な器官なんだと再認識しました。 

また、人間であってもその知的活動を支えているのは回路であり、その経路を破壊すれば簡単に壊れてしまうことを実感し、コンピュータとヒトってあまり変わらないんじゃないかと本気で思うようになりました。互いに構成している物質は違えど、コンピュータはキーボードやマイクからの入力をマザボ上で処理し、その結果をモニターやスピーカーで出力する。ヒトは感覚器官で入力を受容し、脳でその情報を処理して、その結果を運動器官(効果器)で出力する。もちろんコンピュータと脳では処理に用いているアルゴリズムが異なるのはあるけど、技術が進歩して酷似したアルゴリズムで動くようになったら人間のアイデンティティって何になるんですかね。特にSNSが主要なコミュニケーションになりつつある現代だと、ヒトもコンピュータもほぼ同じ形で入力と出力を行うことになるから、よりヒトらしさ?みたいなものが弱いヒトはどんどん生きづらくなりそうだなぁ…。